#15
ふたたび大雪山へ、そう心に決めた旅 Charles Arden-Clarke

旭川から車で層雲峡へ向かう道中、私はこれまで訪れ、親しんできた多くの山々のことを思い浮かべていました。ヨーロッパではアルプス、ピレネー、ジュラ山脈、南アフリカではドラケンスバーグ山脈で過ごしたことがあります。アフリカの山々よりも、ヨーロッパ の山々の方が層雲峡に近い印象を受けました。

なかでも心を奪われたのは、層雲峡の火山地形です。柱状節理がつくり出す美しい幾何学的な景観は、いままで見たことのないものでした。

訪れたのは6月。あたり一面は鮮やかな緑に包まれ、空は青く澄み渡り、遠くに見える積乱雲が強いコントラストを描きだしていました。


私たち夫婦は30年以上暮らしたスイスとフランスを離れ、最近イギリスへ戻ったばかりです。だからこそ、層雲峡のような山々を心から懐かしく感じました。イギリスにも美しい丘や森はありますが、本当の意味での山はありません。

ホテル大雪は、周辺地域や大雪山国立公園を巡るための素晴らしい拠点でした。ホテルそのものが自然の中に深く抱かれていて、すぐ近くには、層雲峡へと流れ下る勢いある川に沿って歩く散策路があります。アフリカで動物学の研究者として働き、その後、国連環境計画で長年仕事をしてきた私にとって、自然の中に身を置くこの体験は、非常に魅力的なものでした。

ホテル大雪には、三つの素晴らしい温泉があり、私は最上階の温泉とサウナを楽しみ、その後、露天風呂で山々を見上げ、鳥の声に耳を澄ませながら湯に浸かりました。温泉に詳しい友人から「効果を最大限に楽しむには」と教えられた通り、この流れを3セット繰り返しました。

夕食は、同行した友人たちとレストランでいただきました。種類豊富な、できたての料理が並ぶビュッフェは素晴らしいものでした。私は海の幸と日本料理が大好きなのですが、自分で注ぐことのできる生ビールが、食事の満足感をさらに高めてくれました。翌朝の朝食もビュッフェで、紅葉谷の散策に備えるには十分すぎるほど多彩なメニューが揃っていました。

手つかずの自然、快適な滞在、そして素晴らしい食事。この三つがそろう体験は、世界中を旅してきた私にとっても、そう多く出会えるものではありません。

川が迸る音や鳥たちの歌声を聴きながら、紅葉谷を散策。

バードウォッチングは私の趣味であり、今回の旅の大きな目的の一つでもありました。多くの猛禽類や、珍しいキツツキなどの鳥たちに初めて出会うことができ、とても嬉しく思いました。同時に、別の季節にもまた北海道を訪れたいという思いが強くなりました。というのも、この二日間では、どうしても見たかったヤマセミに出会うことができなかったからです。
世界のバードウォッチャーにとって、北海道は誰もが憧れる場所です。そして私にとっても、北海道はその評判にふさわしい場所でした。

#15
大雪山に流れる、やさしい時間 海藤 和

バードウォッチングや山歩きをしたいという夫の希望で北海道に初めて行った。東京から旭川に飛び、そこから層雲峡へ行く。大雪山国立公園は子供のころからその存在は知っていて、なんとなく大きな雪の山という字から男性的で恐れ多い山かと思っていたが、行ってみたら川も滝も山も優しい感じで、そこに住む動物や魚、鳥たちが安心して住んでいる感じが伝わった。
朝、ホテルの部屋のカーテンを開けたら谷に降りてきた鹿がすぐそこに立ち、じっと私を見ていた。この地では鹿も熊も鳥も神様のお使いだと考えるわけがその時わかった気がする。

温泉やサウナはこの旅行で私が楽しみにしていたことの一つだが、ホテル大雪には3つも お湯があるとのことで食事の前にゆっくり楽しんだ。温泉、サウナの後、露天風呂からホテルの庭とその背景の森をぼんやり見ていると、このような時間こそが贅沢なのだと思い、日本の暮らしの幸せのひとつの真髄だと思った。そしてお湯に浸かる女性たちも同じようにその時間を大切に静かに味わっているのでここは良いホテルだと確信した。


*写真はホテル大雪 HP より

夕食も朝食も同行の友人二人と我々でホテルのビュッフェを食べたが、これがとても美味しいだけでなく、アイヌ料理やエスニック料理など珍しいものもいろいろ食べられて大満足だった。海外から短期間日本に遊びに来ていると、あれもこれも日本の美味しいものを食べたいわけだが、ビュッフェはその点理想的だったし、熱いものは熱く冷たいものは冷たく材料も味付けも一流で何泊もして何回も食べたいと思った。お酒もワインもとても上質なものが揃っていて最高だった。

次の日は美味しい朝食のあと、「銀河の滝」と「流星の滝」を見に行った。美しくモダンな名前だと思ったが命名されたのは1923年と聞いて驚いた。100年以上も前からここで銀河、流星と呼ばれている滝が、別名「夫婦滝」とも呼ばれるとも聞いて、自分が夫と二人でイギリスから来てこの滝の前に立つことができたことに感謝した。

そのあとに訪れた「大雪 森のガーデン」には初めて見る植物や花もあったが全体的にイギリス風のように感じ、自分の庭に植えているものと同じ花がたくさんあって懐かしく思った。フォーマルに植え込んである美しい花壇から自然に森の中の散策が始まるようにデザインされているのは本当に見事な作庭だ。季節ごとに訪れてみたいと思わされる庭だった。

6月は木々の葉が茂っていてバードウォッチングには最適な月ではないと言われるが、夏鳥の繁殖期なのでさえずりは盛んに聴こえる。イギリス人の夫は初めて見る鳥の英語名を探したり、姿は見えなくても緑の美しい木々の枝のどこかには居る鳥の声を聴いて、とても満足していたようだ。私も姿を現さない鳥が美しい声で鳴くのを聴きながら、「今回は会えなかったけれど次にきっと」と層雲峡がここに存在し続けることを嬉しく思いながら実に満ち足りた気分で大雪の旅を終えた。





*チャールズ・アーデン=クラーク氏からのメッセージ:

今回の滞在はあまりに短いものでしたが、この島とそこに暮らす人々から、自然の中で生き、自然を敬う姿勢を感じることができました。北海道でそのような体験を求める方にとって、「ホテル大雪 ONSEN & CANYON RESORT」は素晴らしい滞在先です。この地域と大雪山国立公園には、まだまだ見たいものがたくさんあります。だから私は、きっとまたここへ戻ってくることでしょう。



*海藤 和 氏からのメッセージ:

今回はとてもゆったりとした気分で層雲峡散策を楽しむことができました。今度は秋か冬にも訪れてみたいです。

プロフィール:

Charles Arden-Clarke
英国サリー州生まれ。オックスフォード大学で動物学、環境学で修士号、アフリカプレトリア大学でラッコの研究で修士号取得。オックスフォードで妻の和と出会い結婚。スイスのWWFインターナショナルに10年、国連環境計画 UNEP ジュネーブ支部、パリ支部にて22年間勤務。環境保全、持続可能な生産と消費を専門とする。国連持続可能な消費と生産10年計画(10YFP)のディレクターを務めた。
現在は二つの国連機関のコンサルタント兼アドバイザーとして活動。自然保護、持続可能な生産と消費、科学論文、政策分析、新聞記事など多く執筆。持続可能な環境と自然の維持を目標に生物多様性の保全、鳥類学、国立公園などに興味があり、趣味はクロスカントリーラン、バードウオッチング、ガーデニング。北海道を訪れることは長年の夢だった。

海藤 和
高校、大学を英国で修了。オックスフォード大学で博士課程取得中に夫のチャールスと出会い結婚。美術史家として展覧会企画、論文、美術批評など執筆出版、オックスフォードブルックス大学、オックスフォード大学で美術史、日本文学の講師を勤める。夫の転任に伴いスイス、フランスに30年居住。ジュネーブでは国連機関である世界知的所有権機関WIPOで働く。現在はロンドン在住。